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むかしむかしの放浪記⑪

西安は言わずと知れたシルクロードの出発点。

ここから遥か彼方のヨーロッパまで続いていると思うとなんかワクワクしたのを憶えている。

しかし残念なことに西安からウルムチへは日程の都合上行けないと断念した。

西安と言えばやはり兵馬俑だろう。僕たちは秦始皇帝兵馬俑へ向かった。

そのスケールは壮大で先ず大きさに驚いた!およそ2000体の兵隊・馬・戦車の俑が整然と並んでいた。

兵隊俑の高さは180㎝、驚くことに一体として同じ顔をしていないそうだ。これが2000年もの間土に埋もれていたらしい。

それにしても始皇帝という人の当時の権力の大きさを改めて思い知らされた。

しばし僕らは声を失い目の前の光景に圧倒されていた。

「やはり中国ってスゲー!改めてここは大陸なんだ」と訳の分からない思いを抱きながら兵馬俑を後にした。

僕らは西安に3日ほど滞在した、ホテルは熱いシャワーが出るし申し分ない想いをしたが。

最終日と前日にとんでもない2つの事件に巻き込まれる。

僕らは次に四川省の成都へ向かうことを決め、駅に明日の列車の切符を買いに行った。

広州―北京、北京―西安と2等寝台での移動だったが、節約しての旅行で少しお金に余裕が出来たので1等の寝台に乗ろう!ということになった。初日の列車内の冒険で係員に睨まれて入ることすら出来なかったあの1等に!

少し迷った。俺たちには分不相応じゃないか?とも思ったが思い切って3枚購入。仲間の1人が代表で3枚のチケットを財布に入れ駅を後にした。後にこの決断が後悔することとなるとは・・・

僕らはホテルまで歩いて戻ろうとしていた時、3人の若い女性に声をかけられた。

3週間近く男だけで旅行して来た僕らは不意に女性から声をかけられてちょっとドキドキし舞い上がってしまった。「あなた達はシャンガンレン?」香港人?「いや、リーベンレンです」日本人です。

そんな会話から始まり飲みに行こうということになった。女性たちに連れられて行った店はディスコのようで飲んで踊れる店だった。

しばしの時間を過ごし、女性たちはこれから友達と合流して他の店へ行くということなので僕らはここで帰ることにした。

帰り道、まだ飲み足りないということで僕らはビールを買いに店へ入った。この頃の中国の店は商品がガラスケースと棚に並んでおりケースの向こう側に店員がいて客と対面で接客する。

仲間の1人がビールを買おうと店員に「ビール6本」と注文している時だった。2人の男が仲間の両脇へ近づいて来たと思ったら凄い勢いで店を出て行った。

僕ともう一人の友達は何があったのかよく分からず、「今の何だ?」ぐらいに思っていたらビールを買っていた仲間が代金を払おうとして、もぞもぞしていたので「どうした?」と声をかけると「財布がないんだ」「ポケットに入れたと思うんだけど・・・」

そして僕らはピンときた!さっきの男2人だ!すられた!・・・もっと早くピンと来い!時すでに遅し。

友達は財布を見事にすられた!そして僕らが奮発して買った明日の成都行き1等寝台の切符3枚も一緒に!

現金はそんなに入っていなかったが切符が・・・・・

後になって思うとあの3人の女性もスリの一味だったのかな?と。僕らが金を持っているかどうか探ったのかもしれない。そんなことを考えても財布は戻ってこない。僕らは公安(警察)へすられたことを届け出た。

店を出ると冷たい雨が降っていた。公安へ着きすられたことを告げると少し待たされた。暗く寒い廊下のベンチに座り小一時間ほど待たされたかな、3人とも何も話さず寒さもあり、かなり落ち込んだ。やっと呼ばれ、応対してくれたのは制服姿の強面のオジサンで「多分財布は戻らない」「届けは受け付ける」と。僕らは明日、成都に向かうがその切符もすられたというと、我々には分からないから駅に行けといわれ。寒い雨の中をまた駅へ。

駅までどのくらい歩いただろう、重い足取りで駅に着き、駅員に事の真相を話すと、「切符が無ければ列車には乗れない」「もう一度切符を買い直せ」と言われた。

それでは2等寝台の切符を買いたいと言うと、「それはダメだ」「もう一度同じ切符を買え」と言う。

仕方なく僕らはもう一度1等寝台の切符3枚を買った。全く高い高い買い物になってしまったが、これも経験だと自分たちに言い聞かせホテルへ帰った。

一つよかったのは帰って冷え切った身体を熱いシャワーで温め洗い流せたこと。北京のホテルだったらもっと最悪だった。

僕らは誰も無口で疲れ果てベットへ崩れ込んだ。

今回はここまで。明日は成都へ向けて気分一新向かおう!

しかし、ここでこの旅一番の事件?事件というか自分の人生の中で衝撃的な人との出会いが待っていた。

それは次回のお楽しみ。

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